ホップ抽出物でアルツハイマー病の発症を抑えることに成功 -認知症の発症と進行の予防につながると期待-

垣塚彰 生命科学研究科教授、笹岡紀男 同研究員、竹本佳司 薬学研究科教授らのグループの共同研究で、漢方薬として使われているホップの雌株の球花(きゅうか)のエキス(生薬名:啤酒花(ひしゅか))にアルツハイ マー病に対する顕著な予防効果が期待できることを、マウスを用いた実験で発見しました。

この成果が、米国科学誌「PLoS ONE」誌に米国東部時間2014年1月29日に掲載されました。

また、サッポロビール株式会社が、この成果に基づく知財権のライセンスを受け、ホップエキスを含有する商品の開発を行い、上市を目指すこととなりました。

高次生体統御学

研究者からのコメント

左から垣塚教授、笹岡研究員、執行達朗 サッポロビール株式会社価値フロンティア研究所執行役員/所長

本研究によって、ホップエキスに今まで知られていなかったアルツハイマー病に対する発症予防効果が認められたことで、高齢化に伴い大きな社会問題となっているアルツハイマー病の発症と進行を予防できる製品の開発に繋がることが期待できます。

今後は、本研究成果のライセンスを受け、サッポロビール株式会社では、同社の有する長年のホップ育種、加工・利用技術、および分析技術を生かし、ホップエキスを含有するより有効性の高い健康食品、サプリメント等の商品の市販を目指すことになります。

概要

アルツハイマー病の主な原因として、脳内において産生されるアミロイドβ(Aβ)と呼ばれる蛋白質の断片が凝集、沈着することで神経細胞死を引き起こし、 記憶や学習能力の低下を招くと考えられています。健康なヒトでも40代からAβの蓄積が始まると言われています。Aβ産生ではγセクレターゼという酵素が 主要な役割を担っており、世界中の製薬会社で、この酵素の阻害薬の研究開発がなされてきました。しかしながら、患者への投与では治療効果が確認されず、未 だ認可されるに至っていません。

そこで本研究では、アルツハイマー病の発症および進行の予防という視点から、既に安全性が確立されてい る漢方薬の原材料を中心に約1,600種類の植物エキスをスクリーニングし、その中からγセクレターゼ活性を最も強く抑制できるものとしてホップの雌株の 球花(下写真)のエキス(以下、ホップエキス)を同定し、アルツハイマー病モデルマウス(ADマウス)に投与することでアルツハイマー病の発症予防効果を 検討しました。

その結果、ホップエキスを摂取していないADマウスでは9ヶ月齢から記憶や学習能力に低下がみられましたが、ホップエキ スを摂取したADマウスでは記憶・学習能力の低下が観察されたのが15ヶ月齢以降となり、アルツハイマー病の発症が顕著に遅延することが判明しました。ま た、18ヶ月齢の高齢のADマウスでは、不安行動の欠落(情緒異常)が認められましたが、ホップエキスを摂取したADマウスでは、このような情緒異常は観 察されませんでした。

さらに、脳内Aβの蓄積を調べた染色結果においても、ホップエキス摂取ADマウスは非摂取ADマウスと比較して有 意にAβの沈着が減少していました。これらの結果より、ホップエキスはγセクレターゼ活性を抑制し、Aβの産生を抑制することで、ADマウスの発症を大幅 に遅延させる効果をもつことが明らかになりました。

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ホップの雌株の球花

 

詳しい研究内容について

ホップ抽出物でアルツハイマー病の発症を抑えることに成功 -認知症の発症と進行の予防につながると期待-

 

掲載情報

朝日新聞(1月30日夕刊 11面)、京都新聞(1月30日夕刊 10面)、産経新聞(1月30日夕刊 10面)、日刊工業新聞(1月31日 27面)、日本経済新聞(1月30日夕刊 16面)、毎日新聞(1月30日夕刊 10面)および読売新聞(1月30日夕刊 10面)に掲載されました。