吉村成弘准教授らの研究成果が、米国科学誌「Structure」の電子版に掲載されることになりました。

タンパク質が核膜孔を通り抜ける際の構造変化を解明 -細胞核内部への遺伝子導入技術への応用に期待-

2014年11月27日

 吉村成弘 生命科学研究科准教授と粂田昌宏 同助教らの研究グループは、核膜孔を通り抜ける性質を持つタンパク質群の構造的「やわらかさ」に着目し、その柔軟な構造変化が核膜孔内部の分子密集空間を通り抜けるのに重要な役割を果たしていることを明らかにしました。この発見に基づき、同研究グループでは、細胞核内部へ遺伝子や薬剤を効率よく届けるためのキャリア分子を創製するための研究に着目しており、非分裂細胞でも高い効率で遺伝子を核内部まで届けることのできる新しいデリバリーシステムの確立を目指して研究を進めています。

 本研究成果は、米国科学誌「Structure」の電子版に掲載されることになりました。

研究者からのコメント

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吉村准教授

分子情報解析学

 細胞内部はタンパク質をはじめとする生体高分子で満たされています。細胞質と核質との間の物流要所である核膜孔内部も、タンパク質が密集した疎水的空間であり、ものの自由な通り抜けが制限されています。今回発表した成果では、タンパク質が自分自身のかたちを柔軟に変えながら分子密集空間を通り抜けることを、分光学的手法と最新の分子シミュレーションを使って明らかにすることに成功しました。私たちが人混みの中を移動するときに、自然と自分の体を柔軟に変えているのとどこか似ています。タンパク質は柔軟な分子であって、結合する相手によって自分のかたちを変えることができます。今回の発見は、それが特定の相手のみならず、周囲の環境によって引き起こされることを示しています。細胞内部では、私たちが思っている以上にタンパク質はダイナミックな構造変化を繰り返しているのかもしれません。今後、そのようなタンパク質のやわらかい構造変化の原理を明らかにするとともに、遺伝子導入技術等への応用研究を進めたいと考えています。

概要

 私たちの体を構成する細胞では、遺伝子は「核」という細胞内小器官に格納されていています。遺伝子の発現等に関わるタンパク質たちが正しく働くためには、細胞質から核内部に輸送されねばなりません。しかし、核は核膜で囲まれていて、細胞質との自由な物質流通が制限されています。

 そこで、核内部への流通の鍵を握るのが、核膜に存在する「核膜孔」とよばれるタンパク質複合体です。核膜孔内部はタンパク質が密集していて、細胞内部のさまざまな生体高分子が自由に通過することを妨げています。しかし一方で、細胞内部には核膜孔をうまくすり抜けることができるタンパク質が存在し、細胞質と核との間の流通において重要な働きをしています。タンパク質がいかにして核膜孔を通り抜けるかに関する分子メカニズムは、これまで明らかにされていませんでした。

 同研究グループは、核膜孔を通り抜ける性質を持つタンパク質群の構造的「やわらかさ」に着目し、さまざまな分光学的手法や生化学的な手法を用いて、その柔軟な構造変化が核膜孔内部の密集空間をすり抜けるのに重要なはたらきをしていることを明らかにしました。この発見に基づき、同研究グループでは、細胞核内部へ遺伝子や薬剤を効率よく届けるためのキャリア分子を創製するための研究に着目しています。

 

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図:タンパク質が核膜孔を通り抜ける際の構造変化

バネのような構造をしたタンパク質の構造が柔軟に変化することにより、分子が密集した孔内部の空間を通り抜けるとこができる。

詳しい研究内容について

タンパク質が核膜孔を通り抜ける際の構造変化を解明 -細胞核内部への遺伝子導入技術への応用に期待-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1016/j.str.2014.10.009

Shige H. Yoshimura, Masahiro Kumeta, Kunio Takeyasu “Structural Mechanism of Nuclear Transport Mediated by Importin β and Flexible Amphiphilic Proteins” Structure 22, December 2, 2014