高次遺伝情報学分野の酒巻和弘准教授らの研究成果が、生命科学誌「BioEssays」に掲載されました。

カスパーゼ8とパラログ遺伝子の分子進化的解析から判明したアポトーシス-シグナル伝達機構の起源

高次遺伝情報学

概要:

アポトーシスによる細胞死を研究する上で、マウス、線虫とショウジョウバエはモデル動物として有用な生物であり、これら生物を使った解析からアポトーシスのシグナル伝達機構の詳細が明らかとなってきた。特に、外因性アポトーシス-シグナル伝達経路(extrinsic apoptotic signaling pathway)とそれに関わる因子についてはマウスを使って解析が進み、一方線虫とショウジョウバエにはこの経路が認められないことから、このシグナル伝達系は進化的に脊椎動物のみに存在すると考えられていた。しかし研究グループらによる最近の研究によって、この外因性アポトーシス-シグナル伝達経路で実行因子として働くカスパーゼ8が、様々な無脊椎動物に存在することが判明し、特に刺胞動物門のサンゴではカスパーゼ8ばかりでなく、カスパーゼ8と複合体を形成しアポトーシスのシグナルを下流に伝えるために必要なアダプター分子(FADD)とデス-レセプター(Death receptor)も発見された。またサンゴには内因性(intrinsic)アポトーシス-シグナル伝達に必須なアダプター分子Apaf-1も見つかっている。これらのことから研究グループは、アポトーシスのシグナル伝達機構が左右相称動物に進化する以前から多細胞生物において既に存在している可能性を本レビューで紹介しています。(要約図参照)  また研究グループは、無脊椎動物から脊椎動物に進化する過程で、遺伝子重複によってカスパーゼ8からカスパーゼ10・カスパーゼ18・c-FLIPのパラログが派生したことを示唆しています。(要約図参照)古代魚のシーラカンスには、カスパーゼ8を含めた4つの遺伝子が同じ遺伝子座上に並んで存在します。しかし、この4分子はその後保存されず、有袋類から真獣類に進化する過程でカスパーゼ18遺伝子がゲノムから欠落し、カスパーゼ10遺伝子はマウスやラットを含めた一部の齧歯類で消失していることが判明しました。カスパーゼ8遺伝子が破壊されたノックアウトマウスは胚性致死となるのに対し、カスパーゼ8遺伝子に変異が生じ酵素としての機能を失くしてもヒトの場合は生存している例を挙げながら、カスパーゼ8とパラログ分子間で生理機能に関して冗長性があることを本レビューで提起しています。 酒巻(BioEssays_要約図)

雑誌:

BioEssays 37(7): 767-776 (2015)

タイトル:

Evolutionary analyses of caspase-8 and its paralogs: Deep origins of the apoptotic signaling pathways

著者:

Kazuhiro Sakamaki_, Kenichiro Imai, Kentaro Tomii and David J. Miller

掲載日:6月23日付でオンライン掲載

URL: [http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bies.201500010/abstract]

また同誌のHighlights(37(7):712-713)においても本研究が取り上げられている。

URL: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bies.201570073/abstract]