研究紹介
生物学・生命科学が社会に与える影響は、ますます大きくなろうとしています。基礎研究からは人間や生物に関するこれまでの見方を変えるような知見が生み出され、医療や創薬、農業といった応用分野では、分子レベル・細胞レベルでの研究成果にもとづく新しい技術が開発されています。このような時代においては、専門分野での科学研究を進めるだけでなく、その意義や問題点について専門の枠を越えて考えることが重要になります。
私たちの研究室では、生物学・生命科学の歴史と現状を専門外の人々と共有し、その意義や問題点についてともに考えることを目指しています。人間や生物の見方を変えるような発見とはどのようなものか、新しい技術の誕生にともない、どのような倫理的・法的・社会的問題(英語ではELSIと略される)が生じているのか。私たち自身が研究情報や社会的問題についての調査・分析をしながら、専門家と専門外の人々との議論をコーディネートしたいと考えています。その際に、科学者や科学者のコミュニティーと共同で活動を企画したり、ディスカッションする場を作ったりと、常にサイエンスの現場と関わりながら研究・活動を行うことが、私たちの研究室の基本方針です。
具体的には以下の3つのテーマについて研究と実践を行っています。
1.生命科学・基礎医学研究の発展にともなって生じる倫理的・法的・社会的課題の分析
ゲノム研究・幹細胞研究をはじめ、生命科学・医学の基礎的研究の発展が引き起こす倫理的・法的・社会的課題について分析します。特に、議論の場における科学的情報の扱われ方に重点を置きます。ヒトゲノムデータの共有など、ヒトゲノム研究のガバナンス(研究の進め方)に関する課題の分析や、(日本の)政府による基礎研究および臨床研究の指針(例:ヒトゲノム・遺伝子解析研究指針、ヒトES細胞指針、ヒト幹細胞の臨床研究指針など)の問題点の分析なども行っています。
2.科学コミュニケーションの実践と理論的研究
科学研究者と専門外の人とが出会い、意見を交わす場を企画・実践すると同時に、それらの活動の専門家および専門外の人々への影響を分析します。新聞を含むメディアのあり方を検討するために新聞記事の分析も行っています。対象とする研究分野は、生物学・生命科学全般ですが、現在は、ゲノム研究・幹細胞研究・合成生物学などに力を入れています。ゲノム研究分野では、「ゲノムひろば」の企画・運営・調査を継続して行っており、2007年夏には京都・法然院で電子顕微鏡の写真展を開催しました。2007年秋からは、「物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)」の科学コミュニケーションプログラムにも関わっています。
3.生物学・生命科学の現代史
20世紀後半の生物学・生命科学の歴史を、上記1、2の研究活動につながる分野を優先した上で、具体的なトピックスに焦点を当てながら調査・分析します。文献調査や研究者へのインタビューなどの手法を用います。
大学院生と博士研究員(ポスドク)には、それぞれの経歴(大学での専門分野他)と興味に応じて、上記の3つのうちの一つないしは2つ以上が重なる分野で研究テーマを持って研究(と実践)を進めていただきます。修士課程では日本語または英語の修士論文を書き、博士後期課程では英語論文を国際誌に発表することが修了の条件となります(博士論文は日本語でも英語でも構いません)。
毎年8月に修士課程の入学試験を、2月頃に定員の空き状況に応じて博士後期課程の編入試験を行います。生物学・生命科学系の学部・研究科出身者も、文科系学部・研究科出身者も受験が可能です。募集要項は入試の時期にあわせて生命科学研究科のホームページに掲載されます。また博士研究員(ポスドク)も随時募集しています。さらに詳しいことをお聞きになりたい方は加藤(kato@zinbun.kyoto-u.ac.jp @を半角にして下さい)までメールを下さい。
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