粂田 昌宏 研究歴

 

氏名: 粂田 昌宏

職名: 助教 Assistant Professor

出生: 1980年 静岡県掛川市

学歴:
2000-2004年 京都大学 総合人間学部
2004-2010年 京都大学 大学院生命科学研究科(博士・生命科学)

職歴:
2008-2010年 日本学術振興会特別研究員
2010年-現在 京都大学 大学院生命科学研究科 助教
 

研究テーマ

[細胞内難溶性構造基盤の解明]

細胞内にはさまざまな機能的分子複合体やコンパートメントが存在し、その形成・解離は適時適切に制御されなければなりません。細胞内の分子の非常な混み合いっぷり(例えばタンパク質濃度は~200mg/ml程度)を考えたとき、個々の個性的な分子たちがどのように自己組織化されて機能的ユニットを形成しうるのかは、大変不思議で興味深い点です。これまでに我々は、原子間力顕微鏡による構造解析・質量分析器によるプロテオミクス解析・網羅的に作成されたモノクローナル抗体を用いた分子生物学的解析、といったさまざまな角度から、細胞内の構造的基盤となっているタンパク質群の構成と動態を明らかにしてきました。これらの研究から得られた知見は、核膜・核膜孔複合体・核小体などの構造と機能の研究へと発展しているほか、細胞骨格や核内の新規タンパク質の解析へと繋がっています。

[細胞内情報伝達を担保する分子動態の解明]

我々は、細胞内で分子がどのようにふるまうことによって情報が伝えられるのかに興味を持っています。例えばシグナル伝達において転写因子が細胞質から核質へと移動して遺伝子制御を行うことなどはよく知られていますが、溶液中でブラウン運動する雑多な分子集合の中から有意な方向性を持った情報を引き出すことは、無秩序から秩序を抽出する作業です。エネルギー的に無理なくこれを行うために、細胞はどのようなカラクリを備えているのでしょうか。我々はこれまでに核膜孔複合体や繊毛基底小体などの分子の選択的透過機構に着目し、タンパク質分子の物理化学的特性に起因する構造変化が分子選別に大きく関与していることを明らかにしてきました。また、この仕組みに基づき、これまで細胞核には存在しないと思われていたタンパク質であってもごく少数が核内に到達し、遺伝子制御などに関与している例を報告してきました。今後もさまざまな手法を利用して、細胞内情報伝達の仕組みを分子レベルで考察していきます。

[可聴域音波に対する細胞応答の探索]

音(可聴域音波)は、我々動物個体にとって、外界認識やコミュニケーションのツールとして非常に重要な役割を果たしますが、細胞レベルでは影響を及ぼし得るかどうか、これまでほとんど科学的研究がなされてきませんでした。我々はこの点に着目し、細胞が音に対して何らかの応答を示すかどうかを探索し始めました。これまでのところ、音波暴露依存的に抑制される遺伝子群を見出すとともに、音圧や波形がこの抑制効果に重要な要素であること、細胞種によってこの遺伝子応答の度合いが大きく異なること、などを明らかにしました。これまで一般的に、音は耳で受容し脳で統合解釈されることではじめて生物にとって意味を成すものと捉えられてきましたが、実は細胞レベルで音を認識するシステムが存在するのかもしれません。今後も独自の切り口から、音と生命の根本的な関係を解き明かしていきます。

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