参考図書
比較的新しい図書の中から、いくつかの参考図書を紹介する。
このコーナーは、学部学生・大学院生向けの参考書案内として、今後、随時充実させていく予定である。
- 西谷和彦 (2011) 『植物の成長』, 裳華房, 203 pp.
植物生理学のうち発生と成長に関する部分を扱った新しい教科書。最近の研究の進展を取り入れつつ、要領よくまとめられている。図もわかりやすい。随所に「コラム」(読み物)が挿入されるなどの配慮もなされている。『Taiz & Zeiger 植物生理学 第三版』の後半部分をカバーする新しく、使いやすい教科書として特に薦められる。
- 神谷勇治・小柴共一 (編)『新しい植物ホルモンの科学 第2版』, 講談社サイエンティフィク, 2010年, 203 pp.
分担執筆: 第10章「フロリゲン」 pp. 169-182.研究の進展が著しい植物ホルモンに関する最新の学部学生向け教科書。11種類の「植物ホルモン」(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノステロイド、ジャスモン酸、ペプチドホルモン、フロリゲン、ストリゴラクトン、サリチル酸)をそれぞれの専門家が解説している。
- 日本植物生理学会 (監修) 西村尚子(著)『花はなぜ咲くの?』(植物まるかじり叢書3)
化学同人, 2008年. 149 pp. カラー口絵 12 pp.日本植物生理学会が、研究成果を広く一般に還元し、あわせて植物(とそれに関する研究)に対する親しみと理解を深めてもらう目的で刊行した『植物まるかじり叢書』(全5冊)の中の1冊。荒木が監修役を務めた。花成を含めて花を巡る様々な研究をサイエンスライターの西村尚子さんが8人の研究者の取材をもとにわかりやすくまとめている。お薦めの一冊。
ほかの4冊の著者・題名・監修役・刊行年は 以下のとおり。
葛西奈津子 「植物が地球をかえた!」(寺島一郎), 2007年.
瀧澤美奈子 「植物は感じて生きている」(島崎研一郎), 2008年.
葛西奈津子 「進化し続ける植物たち」(長谷部光泰), 2008年.
松永和紀 「植物で未来をつくる」(佐藤文彦), 2008年.
- 「植物の軸と情報」特定領域研究班 (編) 『植物の生存戦略 -「じっとしているという知恵」に学ぶ-』(朝日選書821)
朝日新聞社, 2007年. 234 pp.平成18年度に終了した、文部科学省の特定領域研究「植物の軸と情報」(領域代表:福田裕穂 東京大学教授)の成果を一般に公開する目的で編集された書籍。特定領域研究の10名の研究班員がサイエンスライターと緊密に連携しながら、それぞれの専門の研究領域の研究成果をわかりやすくまとめている。お薦めの一冊。
- 塚谷裕一・荒木 崇(編)『植物の科学』, 放送大学教育振興会, 2009年, 270 pp.
分担執筆:「まえがき」と第3, 4, 7, 8章(「発生・成長 (1), (2), (5), (6)」) pp. 3-4, 49-63, 64-78, 113-126, 127-139.平成21年度開講の放送大学の科目『植物の科学』のテキスト。人と植物の関わりから、発生と成長、代謝、植物どうしの関わり、微生物や動物との関わりまで、現代の植物科学を概観する内容になっている。
- アエラムック『植物学がわかる』
朝日新聞社, 2001年. 176 pp.第一線の研究者が植物学のさまざまなトピックスについて最新の研究成果も踏まえて平易に解説する植物科学についての入門書。気楽に手にとって、現代の植物科学のさまざまな研究にふれてみてください。
- 横田明穂 (編) 『植物分子生理学入門』
学会出版センター, 1999年. 268 pp.奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・植物系のスタッフが分担執筆した新しい教科書。少し古くはなっているが、簡潔かつ平易にまとめられており、大きさも手頃な好著。
- 岡田清孝, 町田泰則, 松岡 信 (編) 『新版 植物の形を決める分子機構 形態形成を支配する遺伝子のはたらきに迫る』 (植物細胞工学シリーズ12)
秀潤社, 2000年. 292 pp.シロイヌナズナ、イネを用いて植物の発生・分化、形態形成、成長制御を研究している第一線の研究者がさまざまなトピックスについて最新の研究成果も踏まえて解説している。高等植物の発生生物学についての入門書の役割も果たす。冒頭の40頁はカラー口絵となっており、本文の理解を助ける。
- 岩渕雅樹, 篠崎一雄 (編) 『植物ゲノム機能のダイナミズム -転写因子による発現制御-』
シュプリンガー・フェアラーク東京, 2001年. 256 pp.転写制御因子という切り口から、発生・分化、環境応答、病害抵抗性といった植物が示す様々な営みをまとめた総説集。用語解説、図解も充実しており、参考書としても優れている。
- 岡田清孝・町田泰則・島本 功 ・福田裕穂・中村研三 (編) 『植物の形づくり 遺伝子から見た分子メカニズム』(蛋白質核酸酵素 2002年9月号臨時増刊)
共立出版, 2002年. 320 pp.3. の続編ともいえる総説集。
- 岡 穆宏・岡田清孝・篠崎一雄 (編) 『植物の環境応答と形態形成のクロストーク』
シュプリンガー・フェアラーク東京, 2004年. 230 pp.外部環境要因(非生物的・生物的)に対する応答反応と発生の関連を扱った総説集。参考書としても薦められる。
- 島崎研一郎・西谷和彦(監訳) 『Taiz & Zeiger 植物生理学 第三版』
培風館, 2004年. 679 pp.アメリカの大学で広く用いられている植物生理学の教科書の邦訳版。改訂を急いでおこなったらしく、章によって出来・不出来がかなり異なっているように見受けられる。荒木が翻訳を担当した『花成』の章はよくない方に該当する(明瞭な誤りは訂正した)。しかし、植物生理学全般に関して、最近までの研究成果を取り入れてコンパクトにまとめていることを考えると、薦められるべき教科書といえる。原書は既に第四版が出ている。
- Ottoline Leyser & Stephen Day "Mechanisms in Plant Development"
Blackwell, 2003年. 241 pp. (ISBN:0-86542-742-9)内容も優れ、手頃な分量にまとめられている新しい教科書。オーキシン情報伝達を中心に研究している Leyser さんとサイエンス・ライターの Day さんの共同作業によるものということだが、今後、改訂を続けていって欲しい教科書である。研究室の学生の勉強会用に薦めている。
- 日向康吉 (編) 『花 -性と生殖の分子生物学-』
学会出版センター, 2001年. 290 pp.花成から花の形態形成、配偶子形成、受粉、自家不和合性、胚発生等の生殖生物学を扱った本。研究成果の報告書という側面に加えて、教科書としての配慮もなされている。
- 瀧本 敦 『花を咲かせるものは何か 花成ホルモンを求めて』 (中公新書1400)
中央公論社, 1998年. 218 pp.著名な花成生理学者が、花成について、特に、日長(光周期)による花成誘導のしくみについてわかりやすくかつ情熱を持って語ったもの。副題にある「花成ホルモン(フロリゲン)」は、その存在が提唱されてすでに60年余り経ち、その間、本書の著者を含めて多くの研究者が挑んできたががその実体が明らかにされていないもので、大変な手強さが実感される。この古典的な問題に挑んでみようという人には大きな示唆を与えてくれる必読の一冊である。
- Brian Thomas & Daphne Vince-Prue "Photoperiodism in Plants 2nd edition"
Academic Press, 1997年. 428 pp. (ISBN:0-12-688490-0)植物の光周性の関する定評ある教科書・参考書。これまでの生理学の蓄積に関して知りたいときに極めて有用であり、アイディアの源としても手元におきたい。