熊谷英彦名誉教授(石川県立大学学長)が2013年第23回イグ・ノーベル賞(化学賞)を受賞されました。

受賞内容[熊谷英彦先生の説明文より]

タマネギを包丁で切ると涙が出ます。
涙の原因となる揮発性の成分が、包丁でタマネギ細胞を切ることにより出てくるわけですが、この催涙成分は、タマネギが持っている催涙成分合成酵素(Lachrymatory-factor Synthase、LFS)によって作られることを明らかにしました。言い換えると、この酵素を発見したということです。
その結果を2002年に「Nature」という国際的な雑誌に発表しました。今回、その研究成果が受賞対象として取り上げられたわけです。

この研究は、ハウス食品(株)の研究所、ソマテックセンターで、同社の研究者らによって行われたものです。私は、その際、酵素の精製等のこの研究に関するアドバイスをしました。また、東京大学名誉教授の長田敏行先生も共同研究者です。

この研究が行われるまでは、タマネギの催涙成分は、その前駆物質(1-Propenylsulphenic acid、プロペニルスルフェン酸)から酵素反応ではなく自然な化学反応によってできるという説が認められていました。しかしハウスのソマテックセンターの研究者達は、同じ前駆物質がニンニクにもあるのに、ニンニクでは催涙成分ができないのはおかしいと考えました。そこで、タマネギには催涙成分の前駆物質から催涙成分を作り出す酵素があると仮定し、その酵素を純粋にすることにしました。これが結構大変な実験で、酵素が直接作用するその前駆物質は不安定ですぐ分解するので、その前の段階の物質(PRENCSO)を用いて、酵素反応を追跡し、目的酵素を何とか純粋にしました。そして、それを基に催涙成分合成酵素の遺伝子をクローン化し、大腸菌にその酵素を作らせました。そして大腸菌で生産したこの酵素が、前駆物質から催涙成分を作り出すことを確認し、この酵素が催涙成分合成酵素であることを証明しました。

次の研究として、この催涙成分合成酵素の遺伝子が働かないタマネギを作ると、切っても涙が出ないタマネギを作れると考えられます。ハウス食品の研究者たちは、ニュージーランドの研究者との共同研究で、そのようなタマネギを作りました。そして、ほとんど催涙成分を出さないタマネギの作製に成功しました。このタマネギの今後の利用が興味深く思われます。

熊谷英彦

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The 2013 Ig Nobel Prize Winners(Improbable Research サイト)

石川県立大学