上村匡教授らが執筆した非典型的カドヘリンに関する章が、“The Cadherin Superfamily: Key Regulators of Animal Development and Physiology” (S. Suzuki and S. Hirano eds, Springer) に掲載されました。

 上村匡教授らが執筆した非典型的カドヘリンに関する章が、“The Cadherin Superfamily: Key Regulators of Animal Development and Physiology” (S. Suzuki and S. Hirano eds, Springer) に掲載されました。

http://link.springer.com/book/10.1007%2F978-4-431-56033-3

http://www.springer.com/jp/book/9784431560319 

 細胞認識学分野の上村匡教授、石東博研究員、新田昌輝さん(博士後期課程)、碓井助教が、第10章 “Seven-Pass Transmembrane Cadherin CELSRs, and Fat4 and Dchs1 Cadherins: From Planar Cell Polarity to Three-Dimensional Organ Architecture” (p251-275) を執筆しました。

 この章ではカドヘリンスーパーファミリーの中で、非典型カドヘリンである7回膜貫通領域を有するCELSRと(ショウジョウバエホモログはUsui et al., 1999で報告されたFlamingo)、同じく非典型カドヘリンであるFatおよびDachsousについて解説しています。キイロショウジョウバエを用いた分子遺伝学によりこれらのタンパク質が同定され、今日ではこれらの相同タンパク質が多種の動物の様々な器官の発生過程に重要な役割を果たすことが分かっています。発生過程において、細胞は集団としてダイナミックなふるまいを見せます。この章の主題である非典型カドヘリンたちは、特にこの細胞集団としてのふるまいの制御において主要な役割を果たしており、これらの分子の機能が損なわれると器官形成の異常が引き起こされ、時には個体が発生中に致死となることもあります。

 本章では、平面内細胞極性 (PCP; Planar Cell Polarity) と呼ばれる現象に注目し、PCP がどのようにこれらのタンパク質によって制御されるかについて詳しく述べています。PCPとは、ショウジョウバエで見られる翅毛や、脊椎動物での繊毛のような細胞内小器官の向きが、細胞シート内で厳密にそろえられていることを指し、名付けられた名前です。今日では、PCPを司るシステムによって、我々の体表の毛包の傾き方向、神経管閉鎖、卵管上皮ひだの方向など様々な三次元構造の形成や、集団的細胞移動などの細胞の動態が制御されていることが明らかになってきています。このような広がりを見せるPCP分野の中で、CELSRやFat、Dachsousが細胞レベル、分子レベルで果たす機能について、筆者らの先導的な研究成果を交えて解説しています。

 

<用語解説>

カドヘリンスーパーファミリー

 カドヘリンスーパーファミリーは、クラシックカドヘリンと非典型的カドヘリンからなるファミリーである。

 「カドヘリン」は、calcium-dependent adhesion moleculeに由来して命名された。元々は、細胞外領域に特徴的な反復配列(カドヘリンリピート)を有する一回膜貫通型のタンパク質ファミリーの名称である。隣り合う細胞の膜に突き刺さっているカドヘリン同士が、カドヘリンリピートを介して互いに結合し、細胞同士を接着させる役割を持つ。細胞外領域がカルシウムイオンと結合することが重要であると同時に、細胞内領域においてカテニンと呼ばれる一群のタンパク質と複合体を形成することが、その強固な接着活性に重要である。カドヘリンは、現在ではカドヘリンスーパーファミリーのサブファミリーを構成することが明らかにされ、クラシックカドヘリンと呼ばれる。クラシックカドヘリンに対して、細胞外領域にカドヘリンリピートを持ちながら、細胞内領域においてカテニンとは結合しないタンパク質から成るサブファミリーを非典型的カドヘリンと総称する。

 

<論文タイトルと著者>

Dongbo Shi, Masaki Arata, Tadao Usui, Toshihiko Fujimori and Tadashi Uemura.

Seven-pass transmembrane cadherin CELSRs, and Fat4 and Dchs1 cadherins: from planar cell polarity to three-dimensional organ architecture.

Chapter 10 (p251-275) in “The Cadherin Superfamily: Key Regulators of Animal Development and Physiology” (S. Suzuki and S. Hirano eds, Springer)

本研究は、基礎生物学研究所・初期発生研究部門の藤森俊彦教授との共同研究の成果です。

 

<お問い合わせ先>

   上村  匡(うえむら ただし)教授

  京都大学生命科学研究科

  京都府京都市左京区吉田近衛町

 TEL:075-753-9238  FAX:075-753-4265

 e-mail: tauemura@lif.kyoto-u.ac.jp