センターミッション

東樹宏和

東樹 宏和

現代の生命科学では、最先端の計測機器がもたらす情報を処理する能力が必須となっています。また、ビッグデータがもたらす情報を多角的に分析し、その上で重要な現象や仮説を見出す「データ駆動型」研究が急拡大しています。こうした変革の時代、独自路線の研究を展開するためには、生物試料からビッグデータを取得する作業(ウェット)に加えて、そのデータを自らの手で解析して生物学的意味を抽出・理解する作業(ドライ)が求められます。

実験と情報解析を主体的に融合できる「二刀流」の研究者を育成するため、生命科学研究科では、生命情報解析教育センター(CeLiSIS)を令和5年4月1日付けで設置しました。従来、実験系と数理・情報解析系の研究者は、異なる研究室や教育課程で育成される傾向にありました。時代の要請を受け、実験系の研究者が情報解析を学ぶ機会が提供されることもありましたが、部局ごとに一部の教員の負担に依存する形態となっており、教育研究機能の全学的な強化が課題となっていました。生命情報解析教育センターでは、その前身となった生命動態研究センターで培われた最先端顕微鏡技術と画像データ分析の強みを最大限に活かしつつ、ゲノム構造や遺伝子発現に関する情報解析の基礎を学ぶ機会を全学的に提供しています。「二刀流」の作法を自然に身につけた世代が育つことで、生命現象に関する本質的な問いを立て、新しいアプローチで検証を行う研究が展開されていくことでしょう。

生命情報解析教育センターでは、今後も関連部局や国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター (CIREDS)、医学・生命科学研究支援機構 (iSAL) 、北部キャンパス機器分析拠点 (NOCIAS)と連携しつつ、従来の学問領域の枠を越えて活躍できる高度人財の育成を進めていきます。国立遺伝学研究所日本DNAデータバンク (DDBJ)やチューリッヒ大学、ウィーン大学などの国内外の先端研究機関とも連携を強化しつつ、次世代の生命科学研究が芽生える土壌を形成していきます。