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はじめに

 生命科学研究科では、文部科学省が支援する「魅力ある大学院教育イニシアティブ」事業のひとつとして、「生命科学キャリアディベロップメント」を提案しておりましたところ、採択され、平成18年度よりこれを実施することとなりました。このイニシアティブは、以下に述べるように本研究科大学院教育を改革することを目的としたものです。ここに本イニシアティブの概要を述べ、大学院教育の質の向上のため、各位のご理解とご協力をお願いするものです。

本研究科大学院教育のミッション

 京都大学は、「自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行う」をその研究上の理念として掲げています。
 生命科学研究科は、このような理念を生命科学分野において実現すべく、平成11年に我が国初の生命科学研究科として発足したものです。生命科学は、従来、医・理・農・工・薬学部などのさまざまな研究組織において、それぞれの伝統に根ざして研究が行われてきました。しかし、生命科学の研究成果が、旧来の学問体系を越えた普遍性をもつ一方、生命倫理学など、社会と密接な関係を有することがあきらかとなり、文系学問をもふくめた縦断的・融合的な研究組織の必要性が認識されたことがその設立理由でした。さらに、私たちは、世界に通用する質の高い研究活動をおこなうことが、私たちの組織の存在価値であるとも考えています。
 生命科学研究科では、このような設立の経緯から、幅広い生命科学の諸分野にわたって、大学院学生に最先端の研究活動を経験させ、研究成果をあげさせることが、本人の自信につながり、最大の教育効果をもたらすものと信じております。さらに、真に研究能力をもつ学生に対しては、その研究成果を論文のみならず適切な英語コミュニケーションスキルによって広く発信できる能力を育成することも重要です。
 一方、私たちは、大学院において生命科学を修めた者が卒業後に活躍する場は、決していわゆるアカデミックな研究職だけではなく、企業、行政、ベンチャー、マスメディア等々多様であり、そのような社会的・知的活動の重要性を認識しております。自由・自主の校風に従い、学生諸君がこれらの多様な進路を自主的に選択できるように支援することも本研究科の教育上の重要なミッションであります。
 「生命科学キャリアディベロップメント」は、このような本研究科の大学院教育の目標を達成するために、平成18年度および19年度にわたって実施される大学院教育改革です。

「生命科学キャリアディベロップメント」の具体的内容

 本イニシアティブによる改革の骨子は以下の通りです。

1)大学院講義の充実

 修士課程カリキュラム講義は、幅広い生命科学の諸分野や周辺領域を体系的に理解することを目的とし、講義内容の見直しを行います。特に、生命科学を学ぶ者が知っておくべき生命科学と社会との接点、研究成果を社会に還元し共有する方法についての講義を充実させます。
 博士課程では、従来、各研究室における演習がカリキュラムの基本でしたが、それに加えて、カリキュラム講義を整備します。これらの講義により、博士課程学生は、

  • 最先端の生命科学の発展を国内外の一流講師によりリアルタイムで学ぶ
  • さまざまな場で、生命科学を基礎に活躍する講師の講義により、学生が卒業後の多様な進路を知るきっかけを得る
  • 高い倫理性をもって生命科学の研究成果を社会と共有し、実用的に活かす方法論を学ぶ
  • 研究成果を世界に発信するための実戦的な英語コミュニケーションスキルを学ぶ

ことが期待されます。

2)実戦的生命科学英語コミュニケーションプログラム

 研究成果が客観的な評価を受けるためには、それを英語論文として公表することはもちろんですが、国際学会、セミナー等で発表し、専門家と科学的な討論を深めることが重要です。英語を母国語としない研究者は、この点でハンディキャップがあるわけですが、従来の我が国の大学院教育は、このような学生のコミュニケーションスキルの修得にほとんど注意を払っていないのが現実でした。「生命科学キャリアディベロップメント」では、研究成果を国際的に発信できるコミュニケーション能力の開発に力を入れます。その方策のひとつとして、大学院学生の国際学会発表、共同研究等のための海外研究室派遣を、単なる渡航滞在費支援のみならず、発表スキルのアドバイスなども含めて総合的に支援します。

3)複数指導教員による研究・進路決定の支援体制

 学生が研究の遂行、将来の進路決定にあたって、主体的に判断する能力を養うことは大学院教育の重要な目標のひとつであります。それぞれの学生について、日頃の指導を責任をもって行う主指導教員のほかに、二名の副指導教員を担当させることにより、学生が主体的な判断をする際の参考となるセカンドオピニオンを得るシステムを整備します。

4)学生企画による研究討論会

 日頃の実験におわれ、学生はともすると研究室にひきこもりがちです。しかし、同じあるいは異なる分野の学内外の学生に知己を得ることは、学生の視野を広めるばかりでなく、学問を開拓する同世代の同志として一生の財産となると期待されます。このようなきっかけとなるべく、学生が主体的に提案した研究討論会の開催を支援します。

学生との共同作業としての大学院教育改革

 大学院教育の改革は、教員のひとりよがりではできません。私たちは、学生からの建設的な意見・提案のフィードバックを得つつ改革を進めたいと考えています。

本イニシアティブに対する支援のお願い

 以上述べました大学院教育改革は、関係各位のご協力なしには成し遂げることができないのは明らかであります。重ねまして、本事業へのご指導・ご鞭撻をお願いする次第です。