講演タイトル
「皮質層および領野をまたぐ回帰回路を介した音情報の処理基盤」 ポスター🔗
講演者
小野寺 孝興 博士(自然科学研究機構 生理学研究所 視覚情報処理研究部門 助教)
開催日時・場所
2024年12月9日(月) 13:00~14:00
京都大学 医学・生命科学総合研究棟(G棟)2階、セミナー室B
要旨
聴覚は周囲の音情報や他者の発話を適切に処理するために不可欠であり、その最高中枢として大脳皮質の聴覚野が機能する。大脳皮質を低次の脳領域と区別する特徴的な回路モチーフが、一周して元の場所に戻る『回帰回路』である。回帰回路は作業記憶や意識などの高次脳機能に必須と考えられる一方で、その異所的な暴走はてんかんなどの深刻な疾患を引き起こす可能性がある。よって、回帰回路の機能の解明は、脳の適切な機能を理解するだけでなく、疾患治療に向けた第一歩ともなる。
私は2024年2月まで米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校に留学し、覚醒下マウスの聴覚野における回帰ネットワークの機能を多チャネルユニット記録法を用いて研究してきた。まず、古典的に出力層とされる5層から表層に至る皮質層をまたぐ回帰経路に注目した。5層を光遺伝学的に操作することで、この表層への回帰経路が従来の予想に反して抑制的であることを示した(Onodera & Kato, Nat Commun, 2022)。次に、聴覚野にある複数の領野を精度高く同定することにより(Narayanan et al., Cereb Cortex, 2023)、より広域な領野間をまたぐ回帰ネットワークに焦点を当てた。一つの領野を光遺伝学的に機能阻害し、他の領野の活動を記録したところ、全ての領野ペアにおいて興奮性の相互接続が観察された。また、顕著な階層性がみられた1次聴覚野-2次聴覚野のペアから同時記録をおこない、領野間の協調による複雑な音情報の処理メカニズムを解析している。
本セミナーでは、上記の2つのスケールと機能の異なる回帰回路を紹介し、生体内における感覚情報の処理基盤について議論したい。
連絡先
細胞認識学分野 碓井理夫(Tadao Usui)
内線9239