生殖細胞を守る二重の安全装置 ―細胞死遺伝子の誤作動を防ぐ仕組み―
- 教授 甲斐 歳惠
- 細胞認識学
概要
京都大学大学院生命科学研究科の甲斐歳惠教授 (兼 大阪大学教授)らの研究グループは、ショウジョウバエの卵巣で、卵を作る生殖細胞において「プログラムされた細胞死(アポトーシス)」が過剰に起こらないよう制御される仕組みの一端を明らかにしました。私たちの体では、不要な細胞や異常な細胞を取り除くためにアポトーシスが働きます。しかし、生殖細胞では必要な細胞が誤って死んでしまうと繁殖能力に直接影響するため、細胞死は慎重に抑えられる必要があります。本研究では、細胞死を引き起こす遺伝子 reaper(rpr) が不用意に働かないようにする因子 Stand still(Stil) を同定しました。Stilを失うと卵巣の生殖細胞がほぼ消失し、rprの発現増加とアポトーシスの誘導が起こることが分かりました。さらに、Stilはrprの転写を抑えることで細胞死を防いでいることが示されました。また未分化の生殖細胞では、rprが読み出されにくいクロマチン状態にあることが示唆されました。これらの結果から、生殖細胞では (1) Stilによる転写抑制 と (2) 未分化段階での遺伝子が読み出されにくい状態 の二つの仕組みが重なることで、細胞死のスイッチが不用意に入らないよう守られている可能性が示されました。本研究成果は、2026年3月6日に米国の国際学術誌 「PLoS Genetics」 に掲載されます。
論文タイトルと著者
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タイトル
Transcriptional Repression of reaper by Stand Still Ensures Female Germline Development in Drosophila
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著者
Masaya Matsui, Shinichi Kawaguchi, and Toshie Kai
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掲載誌
PLoS Genetics
詳しい研究内容について
研究者情報
| 研究者 |
教授 甲斐 歳惠
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| 所属研究室 | 細胞認識学 |
| 研究室サイト | https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/kai/ |
