高速AFM動画から原子の構造と運動を推計する手法の開発と検証 ―αアクチニンへの適用による曲げ・ひねり運動の解明―
- 特定講師 炭竈 享司
- ナノ生体分子動態学
概要
生命現象の根源的な理解には生体分子の原子レベルでの構造や運動の解明が欠かせません。従来の構造生物学で用いられてきたX線構造解析や低温電子顕微鏡では生体分子の原子構造を解明できますが、観察されるのは低温で凍結された構造のため、いわば生体分子を「写真」撮影するようなものです。一方、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は生体分子の「動画」撮影が可能ですが、その空間分解能は1ナノメートルであるため0.1ナノメートル程度の大きさである原子は識別できません。この欠点を補うため、高速AFMで観測された構造に合うように原子モデルをフィッティングする方法が開発されていましたが、その妥当性は十分に検証されていませんでした。
京都大学生命科学研究科の炭竈享司特定講師(兼:金沢大学ナノ生命化学研究所協力研究員)、金沢大学のKien X Ngo特任助教、フランスのグルノーブル・アルプ大学のSergei Grudinin博士らの国際共同研究グループは、分子動力学(MD)法によるシミュレーションで得られた構造をフィッティングのガイドとする手法(AFMfit-MD)を開発しました。さらに、主成分解析により、高速AFMで観測された原子レベルの運動がMD法によって得られた運動と良く似ていることを示し、開発した手法の妥当性を検証しました。また、開発した手法を筋肉を構成する主要な分子であるαアクチニンに適用し、その曲げ運動やひねり運動を解明しました。
本研究成果は、2026年2月25日に米国の国際学術誌「Nano Letters」にオンライン掲載されました。
論文タイトルと著者
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タイトル
SimHS-AFMfit-MD: An Integrative Approach for Inferring Alpha-Actinin Atomic Conformational Dynamics
(SimHS-AFMfit-MD:αアクチニンの原子レベルでの構造動態推定のための統合的手法の開発) -
著者
Kien Xuan Ngo, Takashi Sumikama, Rémi Vuillemot, Han Gia Nguyen, Ngan Thi Phuong Le, Sergei Grudinin
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掲載誌
Nano Letters
研究者情報
| 研究者 |
特定講師 炭竈 享司教員情報
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| 所属研究室 | ナノ生体分子動態学 |
| 研究室サイト | https://sites.google.com/kyoto-u.ac.jp/suminolab/ホーム |
