安達泰治 教授
生体組織の発生・再生における幹細胞分化、形態形成、リモデリングによる機能的適応などにみられる生命システム動態の理解を目指した力学的研究を進めています。特に、細胞・分子レベルにおける要素過程とそれらが形成するシステムとしての適応的ふるまいを理解するため、「力学環境への適応性」と「構造・機能の階層性」に着目し、実験と数理モデリングを組み合わせたバイオメカニクス・メカノバイオロジー研究を進めています。
荒木崇 教授
植物は、環境に応答して柔軟に発生や成長を変えることで、生活環を完結しています。有性生殖によって子孫を残すために重要な花芽形成の開始(花成)はそうした環境応答が関わる現象のひとつです。葉で受容された環境情報を花芽形成の場である茎頂に伝えるシグナル分子・フロリゲンを中心に花成の研究を進めています。また、有性生殖過程の全貌をとらえたいと考え、コケ植物の苔類ゼニゴケを用いた研究もおこなっています。
井垣達吏 教授
多細胞生物を構成する細胞社会は、細胞同士の「協調」や「競合」により成り立っています。私たちは、ショウジョウバエ遺伝学とイメージング解析技術を駆使し、「細胞競合」と「細胞間協調」の分子機構を解析しています。それにより、発生過程や恒常性維持における細胞間コミュニケーションの分子基盤、さらにはその破綻によるがんの発生・進展機構の解明を目指しています。
井倉毅 准教授
長年、蛋白質複合体解析を中心とした生化学が専門でしたが、ここ数年、バイオイメージング解析にも手を広げ、その結果、スナップショットである生化学的知見と in vivoでの思いの外、蛋白質のダイナミックな動きから得られる知見との間にギャップを感じつつ、一筋縄ではいかない生命の複雑さに一層興味が湧いています。現在では、ゲノムストレスに対するクロマチン制御蛋白質複合体のダイナミックな変化に着目し、ストレス応答蛋白質ネットワークの多様性が生み出される仕組みについて数理解析にも挑戦しながら格闘中です。できればこういった構成的なアプローチで自らの研究をゲノム疾患研究や創薬研究などに発展させて行きたいと考えております。
石川冬木 教授
生き物の一生はゲノムの一生とよく似ています。若い生き物は活発に増殖しますが、老化するに従い増殖速度が低下します。これは、染色体末端部分にあるテロメアの長さが短くなるためです。生き物は周囲の様子が普段と違うとき、用心をしてすぐに逃げられるようにします。ゲノムもわずかな環境変化を感知して警戒状態をとります。私たちは、ゲノムが生き延びるための知恵をテロメアとストレス反応に注目して研究しています。
今村博臣 准教授
細胞が生き、活動し、増殖するためには、物質を変換する代謝のシステムが欠かせません。私たちは、ATPをはじめとした細胞内の代謝物・代謝関連物質をイメージングする新しい方法を開発・応用することで、代謝反応や代謝物が細胞内で空間的・時間的に制御される仕組み、さらに代謝の制御と生命現象・疾病との関係を理解していきたいと考えています。
今吉格 教授
複雑かつ精緻な哺乳類の脳神経系は、遺伝的プログラムに従い再現性良く発生・発達します。一方で、生後発達過程や成体においても、哺乳類の脳は柔軟な可塑的性質を持っています。そして、これらの二つの性質が相まって、動物の行動や高次脳機能を制御する脳神経系が出来上がり、維持されます。このような脳神経系の発生・発達・可塑性について研究を行っています。特に、神経幹細胞の制御機構とニューロン新生という現象に着目しており、分子遺伝学・光遺伝学やライブイメージングという技術を駆使して、研究を進めています。
上村匡 教授
動物が摂取する栄養は、主要な環境要因の一つです。我々のゲノムには、日々変動する栄養バランスに対して柔軟に適応して、個体の成長を調節するプログラムが書き込まれており、その実体を解明しようとしています。また、環境からの異なる感覚入力を区別して神経活動へと符号化し、選択的な行動パターンを生成する神経回路の動作原理も研究しています。さらには、2次元そして3次元の器官構築の仕組みも追究しています。各種オミックスや生体内イメージングなどのアプローチを総合して研究しています。
大塚俊之 准教授
ヒトの脳は進化の過程で著明に肥大化し(大脳化)、学習・記憶といった複雑な高次脳機能を担うハードウェアに進化を遂げましたが、その原因の一つとして脳の母細胞(神経幹細胞)の増加が考えられます。また神経幹細胞は脳の発生・再生においても重要な役割を担っています。こうした脳の進化・発生・再生過程における神経幹細胞の維持・分化制御メカニズムの解明と、分化制御法の開発による神経再生医療への応用を目指して研究を進めています。
垣塚彰 教授
本研究室では、科学的に意義が高い研究を行うと同時に、研究成果を通じて神経変性疾患、癌、肥満・糖尿病の治療法開発に貢献することを目指している。 院生の教育においては、個人の科学研究における実技力を向上させることと同時に、独創性を養うこと、そして自らの考えを論理的かつ効果的 に伝えるトレーニングを重視した指導を行い、21世紀の生命科学研究を支えるオピニオンリーダーの育成を目標としている。
影山龍一郎 教授
1個の受精卵から複雑な個体が形成される発生過程は本当に不思議で驚きです。個々の細胞はどうやって個体内での自分の位置・役割を知るのでしょうか?どうやって決まった時間に決まったことを調和よく進行させるのでしょうか?発生は未知のことでいっぱいです。私達の研究室は、この複雑で不思議な発生の問題に挑戦しています。研究成果は将来の再生医療にも大きく役立つでしょう。この未解決の問題に一緒に挑戦してくれる学生を広く募集しています。
片山高嶺 教授
最近、腸内細菌と宿主の共生が注目を集めていますが、その研究の多くは宿主側から共生を捉えたものです。一方、私たちは微生物側から共生にアプローチしており、特に宿主と腸内細菌間における界を超えた物質のやりとり(シンビオジェニック因子)に注目して、微生物代謝の観点から研究を行っています。更に、良い共生を担うシンビオジェニック因子を微生物合成することでヒトの健康に資するための応用研究も展開しています。
加藤裕教 准教授
細胞は、細胞外からの様々な刺激や環境に応答してその形や位置を変化させています。その細胞の形や位置を決める仕組みは細胞内のシグナル伝達によって厳密にコントロールされていますが、何らかの原因によりそのシグナル伝達によるコントロールが破綻すると、がんなどの疾患の発症へとつながることが考えられます。私たちは、細胞の形や位置を決めるシグナル伝達とその破綻による細胞のがん化に関わる分子メカニズムの解明を進めています。
菅田浩司 准教授
がん細胞は遺伝的要因、環境要因の蓄積に伴って刻々と性質を変化させ、浸潤・転移能を有する悪性のがんに変化していきます。私たちは生きた個体内でこれらの要因を時間的、空間的に操作できるショウジョウバエをモデル生物として用いることで、がん悪性化の普遍的な基盤メカニズムの解明に取り組んでいます。
神戸大朋 准教授
亜鉛は、体内に2グラム程しか存在しないにもかかわらず、極めて多様な生理機能を発揮する。亜鉛不足が味覚障害や免疫不全を引き起こすことはよく知られているが、最近の研究から、亜鉛恒常性の破綻が糖尿病やガンを増悪させることも明らかにされている。亜鉛の生理機能の理解を深め、健康生活を実現させるため、体内亜鉛代謝を司る亜鉛トランスポーターの機能解析や、亜鉛の吸収を高める食品の開発に向けた研究を行っている。
CARLTON, Peter 准教授
DNAには、私たちの体を形作り維持するための情報が含まれますが、DNAの機能を維持するためには、減数分裂を通してDNAを次世代に正しく伝達し、そしてDNAを頻繁に起こる損傷から守ることが重要です。我々は、最先端の顕微鏡技術を用いて、モデル生物線虫において、減数分裂時に染色体が正しく分配されるメカニズムを追求しています。また、哺乳類細胞を用いて、DNA修復時に、DNA上に起こる修飾の役割を明らかにしようとしています。
北島智也 教授
発生の出発点、卵母細胞の染色体分配を研究しています。人は完璧ではなく間違いも起こすように、細胞もときたま間違いを起こします。染色体分配の誤りもその一つです。どうして間違いを起こすのか?それは間違う瞬間を直接見て、その間違いを直してみないと分かりません。もしすべての間違いを直したら、「完璧な人間」が生まれるでしょうか?
木村郁夫 教授
“医食同源”の概念として知られる様に、食生活は生体内の恒常性を調節しており、その調節機構の破綻は生活習慣病に繋がります。近年、食由来の栄養素が単なるエネルギー源として利用されるだけではなく、生体シグナル分子として様々な生理機能に関わることがわかってきました。私たちは、これら多種多様な食由来代謝産物群の分子作用機序を生体受容体側から明らかにする研究を進めています。また、性ステロイドホルモンと細胞膜上受容体による即自性反応を介した高次生命機能を明らかにするための研究も行っています。
見学美根子 教授
脳では100億とも概算されるニューロンが層状に並び、皮質という構造を形成しています。脳発生過程でニューロンは皮質の特定の層に移動し、特定のパターンで突起を伸ばして神経回路を構築します。ニューロンがどのように目的地まで移動し、正しいパターンで突起を伸展させるのかについては、未解明の疑問が多く残されています。私たちは、分子生物学やイメージング技術を駆使して、皮質形成過程のニューロンのダイナミックな動きを追っています。
河内孝之 教授
陸上で繁栄する被子植物は、進化的には水中で誕生した緑藻が多細胞化した後に陸上進出したコケ植物を祖先として環境適応したものです。生物の機能情報は進化の過程とともにゲノムに刻まれています。我々は古くて新しいモデルであるゼニゴケを主たる材料に、植物の光環境応答と発生の分子機構に関する研究を進めています。突然変異体の分子遺伝学と最先端の分子手法を駆使して植物のタフな生存戦略を解き明かしたいと考えています。
酒巻和弘 准教授
細胞死(アポトーシス)におけるシグナル伝達経路を可視化し数理モデルを構築することにより、シグナル伝達分子の伝播を分子レベルで正確に捉えることを目指しています。また、マウス・アフリカツメガエル・メダカ等を実験動物として扱い、発生過程で見られる細胞死の生理的役割を理解することにも取り組んでいます。
白石英秋 准教授
微細藻は、普段ほとんど人目に触れない生物群です。しかし、歴史的には、地球上に酸素を生み出すなど、現在の地球環境の成立に大きく貢献してきました。そして現在、光合成による物質生産の基盤となる生物群として注目されています。微細藻の中でも、食用藍藻アルスロスピラ(スピルリナ)は、大量培養や回収に適した優れた特徴を兼ね備えています。この生物を中心に、微細藻を人類に役立てるべく基礎的な研究を進めています。
杉田昌彦 教授
免疫系が特異的に認識する分子(抗原)は、タンパク質だと考えられてきました。しかし最近の研究から、脂質を標的とした免疫応答の存在が明らかになりつつあります。私たちは、ヒトの細胞やアカゲザルモデルを活用し、「脂質免疫」という新しい視点から、感染症(結核・エイズ)やがん、自己免疫病やアレルギーの研究を進めています。「脂質ワクチン」という新しいタイプのワクチン開発も視野に入れています。
鈴木 淳 教授
細胞を理解することを通して生体内で起こる現象を
理解することを目的としています。特に分子レベル
での説明が不十分な生命現象において、適切なアッセイ
系を組み機能的スクリーニングを行うことで遺伝子を
同定するアプローチを好んでいます。発想は大胆に、
実験は緻密に丁寧に行い、実験結果をしっかりと柔軟に
捉えながら真実に辿り着くこと目標とします。現在の
興味は細胞膜におけるリン脂質スクランブル現象です。
髙里実 准教授
ヒト多能性幹細胞を用いた再生医療研究の目標とはなんでしょうか。私は、試験管内で任意の臓器を完全な形で創り上げることが、その究極的な目標の一つであると考えています。しかし、完全な臓器を作れるかどうかは個体発生の仕組みを如何に正確に理解できているかに懸かっています。私たちはヒト多能性幹細胞から腎臓オルガノイドを作りましたが、本物のヒト腎臓に近づけるためには、これまで以上に基礎研究の積み重ねが必要になっています。今後も、基礎学問無くして人類の発展は無いというフィロソフィーに基づき研究活動を進めていきます。
髙田穣 教授
生命の維持に、ゲノムの安定性は必須です。その破綻による疾患は、まれで主に遺伝性ですが、幹細胞不全や、白血病、発がん、奇形、小頭症、早老症など、様々な病態を示し、ゲノム安定性の重要性を明確に示しています。我々は、こういった疾患の代表として「ファンコニ貧血」や「家族性乳がん卵巣がん」などに着目し、DNA損傷応答メカニズムや、DNA損傷をもたらす細胞内代謝などを研究しています。これらの基礎研究に、さらに国内外の臨床現場とのタイアップによって、患者サンプル解析で得られた知見をフィードバックすることも当研究室の特徴です。
高原和彦 准教授
皆さんが“免疫”と言う言葉を意識するのは、ワクチン接種やインフルエンザに罹った時の事でしょうか。私達は、この免疫に関わる細胞が病原体を見つける為に持つセンサー(レクチン、トル様レセプター)の役割を研究しています。また、病原体が免疫を抑える力を、免疫を制御するツールとして応用する事を目指しています。これらの研究が、感染症や免疫が係わる病気の新たな治療方の開発に繋がると考え、日々研究を進めています。
谷口雄一 教授
生命科学の進展は、次世代シーケンサーや顕微鏡、遺伝子工学を始めとする、新しいテクノロジーの創出によって支えられてきました。私たちは、生命計測・制御の理想形について常に考えを巡らせると共に、各分野の最先端技術に注視することで、画期的で有意義なテクノロジーを創出することを目指しています。
千坂修 教授
マウスとニワトリ胚を用いて、発生時の器官形成機構(特に咽頭・後脳部由来器官)の研究をしています。最近は、正常発生以外にも種々のストレスによる異常発生とエピジェネシスにも興味を持って研究しています。
朝長啓造 教授
ウイルスの本質を探り、ウイルスと生物のつながりを理解することで、”ウイルスとは何か?”という命題に答えを出すべく研究を行っています。研究対象は動物に感染するRNAウイルス、なかでもボルナウイルスとインフルエンザウイルスです。これらウイルスの複製や病原性の謎に加え、生物ゲノムに内在化したボルナウイルス配列の解析からウイルスと生物と共進化を探っています。また、遺伝子治療への応用を目指したウイルスベクター開発も行っています。
豊島文子 教授
生体内では、細胞が決められた方向に分裂・増殖する仕組みがあり、細胞分化や組織構築に重要な役割を果たしています。当研究室では、細胞分裂の軸を決めるメカニズムと、幹細胞の分裂・分化の連携機構の解明を目指しています。また、細胞分裂を制御する様々なタンパク質が同定されていますが、最近、代謝産物も重要であることが分かってきました。タンパク質と代謝産物のクロストークとがん化との関連の解明を目指しています。
中世古幸信 准教授
真核生物の細胞増殖は非常に多くの遺伝子によって制御されています。それらの遺伝子の多くは単独ではなく、他の遺伝子と物理的、あるいは機能的に相互作用する事により様々な生命現象を司っています。このような遺伝子群が形成するネットワークを見つけ出し、それらの作用機序を解析する事で細胞増殖の制御機構の全体像を明らかにする事を目指しております。
中野 雄司 教授
植物は、46億年前に誕生した原始地球を、数10億年かけて生命に富む緑の惑星に変えたように、多様かつ逞しい生命力を持つ生物種です。我々は、この植物の力強い成長の仕組みについて、化学(ケミカル)を手掛かりに生物の謎を解くケミカルバイオロジー研究と分子細胞生物学研究を融合的に展開することによる解明を目指しています。さらに、こうして得られる知見を、環境破壊・食糧不足など、人類が直面する問題の解決にも役立てたいと考えています。
永尾雅哉 教授
私たちは、様々な食品を摂取しています。食品に含まれる、例えばお茶のカテキンなどのように、生存には必須ではないですが、与えられた環境の中で生き抜くために植物が作る二次代謝産物とよばれるものに着目し、その中で、私たちヒトにとって有用な化合物を見つけて、その作用メカニズムを明らかにすべく、研究を進めています。
南璡旼 准教授
がん細胞の生存・増殖・浸潤・転移において、腫瘍微小環境は重要な役割を担っています。がん細胞は、低酸素などの過酷な環境で生き延びるために、様々な因子を分泌することにより微小環境を再構築します。また、分泌因子による微小環境の変化は、がんの浸潤能や治療抵抗性に寄与することも知られています。私たちは、腫瘍微小環境への応答を介した、がんの悪性化に関わる分子メカニズムの解明に取り組んでいます。
西浜竜一 准教授
単細胞緑藻から多細胞陸上植物への進化は、細胞分裂様式の変化、幹細胞の獲得、細胞間コミュニケーションの多様化など、新しい発明が積み重なって起こったと考えられています。また細胞増殖や形態形成が、周囲の外環境により精細に調節されているのも植物の特徴です。私たちはこれらの点に焦点を当て、陸上植物進化の基部に位置する苔類の一種ゼニゴケを用い、植物の辿った進化を理解するための研究を行っています。
野田岳志 教授
インフルエンザウイルスやエボラウイルスは、わずか10種類程度の遺伝子しか持ちません。このようなウイルスが、なぜ細胞内・個体内で効率よく増殖し、時として私たちに致死的な感染を引き起こすのでしょうか?私たちはウイルスの増殖機構の分子基盤を理解し、ウイルス感染症の制御に貢献したいと考えています。
原田浩 教授
生体内の環境は極めて多様で、各細胞は自身の置かれた微小環境に適応しながら形態と機能を維持しています。近年、悪性固形腫瘍(がん)の内部に低酸素・低栄養・低pHをはじめとする特徴的な微小環境が存在し、がんの悪性形質や治療抵抗性を誘導する引き金になっていることが分かってきました。当研究室では、細胞の環境応答とがんの悪性化を担う遺伝子ネットワークを解明し、新たな治療法の確立に繋げることを目指して研究を進めています。
土方誠 准教授
それぞれ世界人口の数パーセントにも及ぶ感染者が存在し、肝癌などの慢性肝疾患の原因となっているC型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスを研究しています。独自に樹立したヒト肝臓由来の細胞を、立体培養を含む様々な方法で培養し、これらウイルスの感染増殖系を構築し、それらの生活環を分子レベルで解明することを目指しています。さらに、その情報を基にこれらウイルスを排除するための抗ウイルス剤開発のための基礎研究を行っています。
福澤秀哉 教授
全ての生命活動を支える光合成では、太陽の光エネルギーにより二酸化炭素が固定されます。周囲の環境が変化しても、それに応じて光合成を維持する生命の生存戦略は驚異です。私たちは、葉緑体を持つ鞭毛虫の一種である緑藻クラミドモナスをモデルに、この生存戦略を支える機能(光やCO2のセンシング・CO2濃縮・有性生殖の誘導・脂質代謝の制御など)について、分子遺伝学・ゲノム生物学を駆使して理解しようとしています。
本田直樹 准教授
生物のマクロな振る舞いを見ていると、一定の目的をもっているように感じることがあります。例えば、生物は外界の情報を処理することで餌の多い場所に自ら動いて行きますし、胚発生過程では多くの細胞達が協調することで体が形づくられていきます。一方で、生物の基本素子である細胞よりもミクロな領域 に目を向けると、単に化学反応などの物理プロセスが働いているに過ぎません。では、分子から細胞、多細胞の階層をまたぐことによって、どのようにしてあたかも目的をもったような生命機能が実現されているのでしょうか?数理モデルや機械学習などの数理的アプローチにより「生命システムが機能を発現する論理」を解き明かすことを目指しています。
増田誠司 准教授
mRNAは、遺伝情報の一過性伝達因子です。真核細胞において、mRNAは前駆体として生合成され、様々なプロセシングを経て成熟mRNAとなり、細胞質へと輸送されてタンパク質合成の鋳型として働きます。mRNAのプロセシング間の共役、細胞質への輸送、分解にかかわるタンパク質複合体の機能解析やmRNA生合成過程を利用した効率的なタンパク質生産法の開発、さらにはmRNAプロセシングを制御する化合物の探索などを行うことで、基礎から応用までを統合した研究を行っています。
松田道行 教授
「細胞の癌化をシステムとして理解する」ために研究してきました。FRETバイオセン
サーを使ってがん遺伝子の活性を生細胞で可視化することに成功し、最近はマウスを
二光子顕微鏡で観察することにより、「生きた動物で細胞内情報伝達系を可視化す
る」という新しい分野にチャレンジしています。がん遺伝子ネットワークの仮想空間
での再現と、新規抗がん剤の開発も研究室の大きなテーマです。
松本智裕 教授
染色体の均等分配は、自己複製に必須な生命現象です。染色体の「ヘソ」ともいえるセントロメアは、各染色体に一カ所のみ、限定された領域に存在し、均等分配のために重要な機能を担います。セントロメアの形成機構と、そこで機能するスピンドルチェックポイントによる細胞周期制御機構の解明が我々の研究テーマです。「自分の研究が世界で一番面白い」と思える熱意ある人材を求めています。
三好知一郎 准教授
我々の設計図であるゲノムDNAの大半は、「がらくたDNA」などと呼ばれる転移因子で占められています。しかしこれは、DNA上を勝手に移動(転移)し、個体間のゲノムバリエーションを生み出すことで進化の原動力となるとともに、時に重篤な疾患につながる変異源として働きますが、その転移メカニズムはよく分かっていません。そこでこれを正確に理解し、ゲノムの品質管理向上につながる手法を開発したいと考えています。
山岡尚平 准教授
植物の有性生殖・配偶子形成は農業・食糧生産のもととなる生命現象です。陸上植物は、1倍体の組織(配偶体)から生殖系列を分化させ、卵と精子(精細胞)をつくり出します。その中核メカニズムは、花の咲く植物(被子植物)から一見異なる発生様式をもつコケ植物まで、広く進化的に保存されていることが分かってきました。私たちは「進化」を問題を解く鍵として、分子遺伝学・イメージング・オミクス解析などを駆使し、そのメカニズムの全体像の解明を目指しています。
吉村成弘 准教授
細胞内部の環境におけるタンパク質の構造・活性・動態に関する研究を進めています。
細 胞内部は、生体高分子が高濃度で存在する特殊な環境です。このような環境下で、染色体、核膜孔複合体内部、核小体などの高分子複合体 が、いかにしてダイナミックな崩壊と構築を繰り返すのか。そのメカニズムを、生化学、生物物理学、シミュレーション等の手法を用い て、分子や原子のレベルで理解する研究を進めています。
渡邊直樹 教授
百聞は一見に如かず。細胞骨格は、細胞にあらかじめプログラムされた静的な枠組みを提供するだけでなく、生理活性物質や物理刺激に反応してダイナミックな変化を示します。このように常に動く生命システムを、分子の働きから細胞・個体の病態生理までつなげて理解することを目標に、細胞蛍光単分子イメージング・顕微鏡新技術開発・薬の作用のリアルタイム可視化に取り組んでいます。