見逃されてきた「非典型」転写因子がコケ植物の有性生殖器官の発生を制御する-植物の有性生殖システムの進化の痕跡を示す鍵因子の発見-

  • 教授 荒木 崇
  • 教授 河内 孝之
  • 准教授 山岡 尚平
  • 助教 井上 佳祐
2024/4/15
  • 分子代謝制御学

概要

被子植物が「花」を作り出すのに対し、コケ植物は造卵器と造精器をつくり、有性生殖を行います。

立命館大学生命科学部 古谷朋之 助教(研究当時)、京都大学大学院生命科学研究科 三枝菜摘 修士課程学生(研究当時)、山岡尚平 准教授、冨田由妃 教務補佐員、丹羽優喜 助教(研究当時)、井上佳祐 助教、西浜竜一 准教授(研究当時)、河内孝之 教授、荒木崇 教授らの研究グループは、大阪大学、東京理科大学、神戸大学、基礎生物学研究所と共同で、タイ類のモデル植物ゼニゴケにおいて有性生殖器官の発生に関わる因子を探索し、新奇転写因子MpBZR3が造卵器と造精器の発生の初期過程に重要であることを明らかにしました。MpBZR3の属する転写因子ファミリーは、被子植物ではあまりみられない一方、コケ植物やシダ植物で高度に保存されており、陸上植物の有性生殖のメカニズムの進化に大きく貢献してきたと考えられます。

本研究成果は、2024年4月11日に、英国の国際科学雑誌「Nature Plants」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント

陸上植物の有性生殖の初期過程に関しては、近年、ゼニゴケを用いた研究で多くの新しいことが明らかになってきました(参考プレスリリース〔https://www.lif.kyoto-u.ac.jp/j/research/research_results/cat11/2023-10-13/〕)。本共同研究では、雌雄の配偶子器(造卵器と造精器)分化の初期段階に関わる新規因子 MpBZR3 を同定することができました。われわれの研究グループは、MpBZR3 遺伝子の同定の基盤となったゼニゴケ造卵器の RNAseq 解析、MpBZR3 遺伝子への蛍光タンパク質シトリン遺伝子のノックイン株の作出と発生初期の配偶子器における発現解析等において重要な貢献をいたしました。今後、こうした研究によって明らかになった制御因子間の関係を研究することで、陸上植物の有性生殖の初期過程の全体像を描くことができるようになることを期待して研究を進めております。(荒木 崇・山岡尚平)

論文タイトルと著者

  • タイトル

    A non-canonical BZR/BES transcription factor regulates the development of haploid reproductive organs in Marchantia polymorpha

  • 著者

    古谷 朋之、三枝 菜摘、山岡 尚平、冨田 由妃、南野 尚紀、丹羽 優喜、井上 佳祐、山本 千愛、元村 一基、島津 舜治、西浜 竜一、石崎 公庸、上田 貴志、深城 英弘、河内 孝之、笠原 賢洋、福田 裕穂、荒木 崇、近藤 侑貴

  • 掲載誌

    Nature Plants

  • DOI

    10.1038/s41477-024-01669-0
    URL : https://www.nature.com/articles/s41477-024-01669-0

詳しい研究内容について

見逃されてきた「非典型」転写因子がコケ植物の有性生殖器官の発生を制御する-植物の有性生殖システムの進化の痕跡を示す鍵因子の発見-

研究者情報

研究者
所属研究室 分子代謝制御学
遺伝子特性学
研究室サイト 分子代謝制御学:https://www.plantdevbio.lif.kyoto-u.ac.jp/index.html
遺伝子特性学:https://www.plantmb.lif.kyoto-u.ac.jp/