コケ植物の栄養繁殖と有性生殖の両方に必要な鍵制御因子を発見―ゼニゴケの転写因子SHOT GLASSの機能を明らかに―

  • 准教授 山岡 尚平
2025/7/31
  • 分子代謝制御学

概要

山岡尚平 生命科学研究科准教授、酒井友希 神戸大学特命講師、石崎公庸 同教授、深城英弘 同教授らと、加藤大貴 愛媛大学准教授らの研究グループは、モデル植物ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)において、繁殖に関わる器官の形成を制御する鍵転写因子SHOT GLASSを発見し、その働きを明らかにしました。

ゼニゴケは栄養繁殖と有性生殖により繁殖します。栄養繁殖では杯状体とよばれる栄養繁殖器官が、有性生殖では雌雄の有性生殖器官が形成されますが、いずれも器官形成のメカニズムは明らかになっていませんでした。そこで、本研究グループは、器官形成に関与すると思われるゼニゴケの転写因子SHOT GLASS(MpSTG)遺伝子に着目したところ、MpSTG遺伝子の破壊株では、栄養繁殖器官である杯状体が全く形成されず、ごく稀にショットグラス状の構造が形成されました。また、MpSTG遺伝子破壊株では雌雄の有性生殖器官も形成されませんでした。このことから、MpSTGがゼニゴケの栄養繁殖だけでなく有性生殖の器官形成にも必須の機能をもつことが明らかとなりました。さらに、MpSTGが被子植物シロイヌナズナが芽を増やすための制御因子と共通した起源をもつことも明らかになり、器官形成の遺伝子制御ネットワークが陸上植物において進化的に保存されている可能性を示唆しました。

今後、MpSTGがどのような遺伝子を制御しているのかを明らかにすることで、農業やバイオものづくり分野において、植物を効率よく増やすための技術の改良に貢献できると期待されます。

本研究成果は、2025年7月30日に、国際学術誌「New Phytologist」に掲載されました。


コケ植物ゼニゴケの葉状体と栄養繁殖器官(杯状体)

論文タイトルと著者

  • タイトル

    SHOT GLASS, an R2R3-MYB transcription factor, promotes gemma cup and gametangiophore development in Marchantia polymorpha

  • 著者

    Yuuki Sakai, Hideyuki Takami, Shohei Yamaoka, Hirotaka Kato, Hidehiro Fukaki, Takayuki Kohchi, Kimitsune Ishizaki

  • 掲載誌

    New Phytologist

詳しい研究内容について

コケ植物の栄養繁殖と有性生殖の両方に必要な鍵制御因子を発見―ゼニゴケの転写因子SHOT GLASSの機能を明らかに―

研究者情報

研究者
所属研究室 分子代謝制御学
研究室サイト https://www.plantdevbio.lif.kyoto-u.ac.jp/index.html