脳の神経活動を可視化する新規マウス系統を開発 -高感度・高速カルシウムセンサーによる神経活動の計測に成功

  • 特定准教授 坂本雅行
2022/2/22
  • 光神経分子生理学

概要

複雑な脳機能を解明するためには、生きた動物の脳から、個々の神経細胞の活動を正確に計測する技術が必要不可欠です。京都大学大学院生命科学研究科 坂本雅行 特定准教授、東京大学大学院医学系研究科 井上昌俊 特任助教(研究当時、現:スタンフォード大学 博士研究員)、東京大学大学院医学系研究科 尾藤晴彦 教授らの共同研究グループは、高感度高速カルシウムセンサーを安定して発現する遺伝子改変マウスの開発に成功しました。

近年、神経活動を可視化する方法として、蛍光カルシウムセンサーを用いた神経活動イメージング法が広く用いられています。本研究では、より正確な神経活動の計測を実現するため、高感度 高速カルシウムセンサー(G-CaMP9a)の開発と、この新規センサーを細胞種特異的に発現誘導可能な遺伝子改変マウス (G-CaMP9aノックインマウス 注1 )の作製をおこないました。2光子励起顕微鏡 注2 を用いた生体イメージングにより神経細胞の活動を観察したところ、このマウスは感覚刺激に対する神経細胞の応答をより正確に検出できることが明らかとなりました。作製したマウスは、カルシウムセンサーの発現レベルが安定して均一なため、複雑な高次脳機能を解明するための有用なリソースとなることが期待されます。

本成果は、2022年2月14日(現地時刻)に米国の国際学術誌 Cell Reports Methods」にオンライン掲載されました。

用語解説
  • ノックインマウス:遺伝子操作により、標的とするゲノム領域に、外来遺伝子の導入をおこなったマウス。
  • 2光子励起顕微鏡:2光子吸収過程により分子を励起し、その蛍光を観察する顕微鏡。従来のイメージング技術では困難であった生体深部の蛍光分子であっても非侵襲的に観察することができる。

論文タイトルと著者

  • タイトル

    A Flp-dependent G-CaMP9a transgenic mouse for neuronal imaging in vivo(Flp 依存的な GCaMP9a トランスジェニックマウスを用いた生体神経活動イメージング)

  • 著者

    Masayuki Sakamoto, Masatoshi Inoue, Atsuya Takeuchi, Shigetaka Kobari, Tatsushi Yokoyama, Shin-ichiro Horigane, Sayaka Takemoto-Kimura, Manabu Abe, Kenji Sakimura, Masanobu Kano, Kazuo Kitamura, Hajime Fujii, Haruhiko Bito

  • 掲載誌

    Cell Reports Methods

詳しい研究内容について

脳の神経活動を可視化する新規マウス系統を開発 -高感度・高速カルシウムセンサーによる神経活動の計測に成功-

研究者情報

研究者
所属研究室 光神経分子生理学
研究室サイト https://optoneuro.weebly.com/