統合生命科学専攻

細胞認識学

メンバー

甲斐 歳惠教授

kai.toshie.2w*kyoto-u.ac.jp

碓井 理夫講師

usui.tadao.3c*kyoto-u.ac.jp 教員情報
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アクセス

吉田キャンパス 医学部構内 医学・生命科学総合研究棟

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甲斐グループ 研究概要

甲斐グループオリジナルHP

研究内容

高等動物は個体としての寿命を避けることはできませんが、有性生殖を通じて次世代を生み出すことで、種の存続を可能にしています。すなわち、個体は遺伝情報の一時的な運び手にすぎず、種の継続という観点では、生殖細胞こそが最も本質的な存在です。私たちは、モデル動物であるショウジョウバエを用いて、卵巣や精巣に存在する微小環境「ニッチ」内で維持される雌雄の生殖幹細胞の制御機構や、それらが卵子・精子へと成熟していく過程の分子機構の解明を目指しています。また、生殖系列に特異的に発現するpiRNAと呼ばれる小分子RNAの産生機構とその機能にも注目して解析を行っています。piRNAは、トランスポゾンと呼ばれるゲノム内寄生遺伝因子の活性を抑制し、生殖細胞のゲノムを守っています。これらのpiRNAは「ヌアージュ」と呼ばれる非膜オルガネラで産生されており、その機能不全は配偶子形成不全や不妊につながります。当研究室では、遺伝学、細胞生物学、バイオインフォマティクス、さらにAlphaFoldによる構造予測などの手法を活用し、ヌアージュの研究を進めています。

主な研究項目

・生殖幹細胞

・配偶子形成

・非コードRNA

・小分子プロセシング

・非膜オルガネラ

 

 

碓井グループ 研究概要

碓井グループオリジナルHP

研究内容

逃避行動を調節する神経メカニズムを理解するために、多数のショウジョウバエ野生型系統(Drosophila melanogaster Genetic Reference Panel; Mackay et al., 2012)の幼虫の逃避行動を比較しました。得られた逃避行動のパターンと強い相関を示す一塩基多型(SNP)をゲノムワイドに探索して、責任遺伝子の候補を多数同定することに成功しています。候補遺伝子群のうち、逃避行動を抑制する新規遺伝子belly roll(bero)に着目して解析を進めています。

bero遺伝子は、GPIアンカー型の膜タンパク質をコードしており、中枢神経系に存在する複数種類の神経ペプチド陽性ニューロンで発現しています。bero陽性ニューロンのうち、腹部ロイコキニン産生ニューロン(ABLKニューロン)で特異的にberoの遺伝子発現を抑制すると、痛覚入力への応答が増大するとともに、逃避行動が増強されることがわかりました。さらに、光遺伝学を利用してABLKニューロン特異的に神経活動を誘導すると、痛覚逃避行動が引き起こされました(Li et al., eLife, 2023)。つまり、ABLKニューロンで発現するBeroタンパク質は、痛覚刺激へのABLKニューロン自身の応答を抑制することで、逃避行動の調節に関与していると考えられます。

興味深いことに、ABLKニューロンは痛覚刺激を受ける前から自発的な神経活動を示しており、この自発活動は痛覚入力以外の何らかの感覚情報を反映しているものと推測することができます 。私たちは、「ABLKニューロンは、Beroタンパク質の機能を介して、体内環境要因による痛覚伝導の調節を行なうニューロンである」との仮説を提唱しています。現在、この仮説を検証するとともに、その生理メカニズムを理解するため、さらなる解析を続行中です。

主な研究項目

・ショウジョウバエ

・痛覚逃避行動

・環境適応メカニズム