統合生命科学専攻

細胞動態生化学

研究概要

研究内容

地球上のすべての生物は、細胞から構成されています。多細胞生物は、単細胞生物からの進化の過程で、各細胞が持つ機能を細分化し、集合させることで臓器を形成することに成功しました。臓器を構成する様々な細胞は、それぞれの機能を発現しながら、状況に応じて増殖、分化、死を繰り返しています。ヒトでは、1日に約10億個の不要な細胞が細胞死によって死に、食細胞に食べられることで除去され、同時にほぼ同数の細胞が産生されることで、ダイナミックに臓器の恒常性が保たれています。我々はこの過程を「臓器リノベーション」と位置づけ、その分子機構の解明に取り組んでいます。特に、不要細胞の除去がうまくいかない場合、自己免疫疾患や臓器機能不全、がんなどの疾患を発症させることから、除去に注目した研究を展開しています。

一方、成人の脳の神経細胞においては、各細胞が神経回路の形成に寄与しているため、容易に細胞死を起こすことができません。また、神経細胞は増殖できないため、自身の細胞内領域を区画化し、シナプス、樹状突起、軸索などにおける不要領域を食細胞による貪食により効率的に除去することに成功しました。我々は、この過程を「細胞リノベーション」と位置づけ、分子機構の解明を目指しています。脳における除去の不全は神経変性疾患や精神疾患の原因となると考えられることから、やはり除去に注目した研究を実施しています。

すなわち、我々は、不要な物質、コンパートメント、あるいは細胞がどのように出現し、生体システムによって認識・排除されるのかに注目し研究を進めています。この過程で特に重要なのは、不要細胞の細胞膜で起こる脂質ダイナミクスと貪食細胞による除去です。また、加齢に伴い体内で蓄積する不要な物質や細胞を除去することは、臓器機能を維持するのに不可欠であるため、合成的なアプローチで制御することも試みています。

脂質ダイナミクスは、不要なコンパートメントや細胞を除去するのに不可欠なだけでなく、精子の受精、ストレス応答、免疫制御、細胞小器官での脂質合成など、様々な生命現象の制御に重要です。ゆえに膜に局在するタンパク質によって脂質ダイナミクスがどのように制御されているかも調べています。また、これらの現象のメカニズムを明らかにするためには、それらを制御する因子の同定が不可欠です。そのため、因子同定のためのスクリーニング技術の開発を通じて、生物学の新領域を開拓し、ヒト疾患の発症の理解、診断、治療、健康維持に貢献することを目指しています。是非一緒に研究を楽しみましょう。

 

主な研究項目

  • 細胞レベルでのリノベーションの分子機構
  • 臓器レベルでのリノベーションの分子機構
  • リノベーションの破綻と疾患
  • 細胞膜・オルガネラの脂質動態の分子機構
  • スクリーニングの技術開発

メンバー

鈴木 淳教授

suzuki.jun.6x*kyoto-u.ac.jp 教員情報
  • @マークを*に置き換えておりますのでご注意ください

アクセス

吉田キャンパス 本部構内 高等研究院物質-細胞統合システム拠点研究棟

キャンパスマップはこちら